わたしは一生に一度の恋をしました
途切れた夢
 わたしは何度も深呼吸をして、辺りを見渡した。試験官らしき人たちが入ってくると、ざわめきが一掃された。わたしは空白になった席を見て、短くため息を吐いた。そこは三島さんの席だったのだ。

 あれから三島さんに会うことも、連絡もなかった。わたしも彼に連絡が取れないでいた。

 今日だけは来るだろうと思っていたが、甘かったようだ。彼は今、何を思って過ごしているのだろう。

 今日はセンター試験の日だ。もちろん、三島さんも出願していた。センターは高校単位で出願するため、誰が来ていないかはすぐにわかった。

「やっぱり三島君、来ないんだね」

 後方の席でそんなやり取りが聞こえた。

「問題用紙を配ります。筆記用具以外は鞄の中にしまってください」

 つながりのない試験官の言葉に、そんな囁きは飲み込まれた。

 由紀は新学期が始まってから学校に来ていない。そのことがほとんど学校に来ない三年にも伝わっていた。そして、皆、三島さんと何かあったのだろうと噂をしていたのだ。

 問題用紙が欠席している三島さんの席にも配られた。わたしは彼が来てくれることを願っていたが、その願いが届くことなく、試験開始の合図が響き渡った。
 わたしはそっと唇を噛みしめ、問題用紙に目線を落とした。

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