わたしは一生に一度の恋をしました
「大丈夫だから。帰ろうか」

 わたしは真一の背中を軽く押し、歩き出そうとした。だが、地面がまるで弾力性のあるゴムのように上手く着地することが出来なかった。

 頭に何かで刺されたかのような激しい痛みが襲った。わたしは思わずその場にかがみこんだ。

「大丈夫か?」

 真一の言葉にわたしは何度も頷く。だが、体が言うことを利かずきちんと頷けたのかさえ分からない。わたしの意識は次第に遠のいていった。

 目を覚ますと辺りを見渡した。

 ここはわたしの部屋だ。
 服装は学校の制服のまま。

 さっきまでの記憶を手繰り寄せ、試験会場で倒れたことを思い出したのだ。

 部屋にある時計は六時を刺していた。外は薄暗く、朝の六時なのか夕方の六時なのか判別がつかなかった。

 私は重い体を起こすと、階段を降り、リビングに向かった。リビングでわたしはテーブルの上にうつ伏せになっている真一の姿を見つけた。

 わたしが真一を起こそうとしたとき、祖母の声が聞こえてきた。
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