わたしは一生に一度の恋をしました
 試験を終えて出てくると、真一が昨日と同じ場所に立っていた。服が私服に変わってた。彼はわたしと目が合うと駆け寄ってきた。

「身体は大丈夫?」

 わたしは真一の言葉に頷く。真一は安心したのか表情を綻ばせた。

「試験はどうだった?」

「何とか解けたと思う」

 わたしの言葉に真一は笑みを浮かべていた。だが、どことなく疲れた印象を受けるのは夜通しわたしを看病してくれたからだろうか。

「家まで送っていくよ」

「家には帰った?」

「一応ね」

 わたしたちは駅に向かうことにした。何人かが試験を終わらせ駅に向かっていたが、見知った顔はいなかった。

 歩道の脇にある木々は枯れ、時折拭く強い風に枝を震わせ寒さに耐えているように見えた。

 わたしが駅に着くと、真一は切符をわたしに手渡す。前もって準備をしておいてくれたのだろう。

 切符の販売所は二箇所あったが、二箇所とも人が十人ほど並んでいた。

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