わたしは一生に一度の恋をしました
 改札口を通ると、駅名の書かれたパネルを見ながら乗るホームを探し出した。わたしたちは駅に停まっていた電車の一番後方の車両に乗り込んだ。
 電車の中は暖房が効いており、感覚のなくなった手にじんわりと温もりが伝わってきた。

「昨日ごめんね。倒れてしまって。連れて帰ってきてくれたっておばあちゃんから聞いた」

「でも大事に至らなくて良かったよ。起きたらほのかが居なくて驚いたよ。昼過ぎに起きたのは小学生のとき以来かな」

 真一はわたしを見ると、言葉を止めた。

 電車の扉が閉まり、一度大きく後方に揺れると電車が動き出した。

「本当は将を呼ぼうと思ったけど、呼べなかった」

 真一は申し訳なさそうに微笑んだ。
 わたしは真一の言葉に頷いた。

「それでよかったのよ。センターにも来られないのだから」

 真一は意味ありげな瞳でわたしを見つめていたものの、何も言わなかった。

 最寄りの駅に着いたが、わたしは家に帰る気はしなかった。わたしは真一の腕を掴んでいた。

 真一は何も言わずにわたしの頭をポンと叩いた。

「良い場所に連れて行ってやるよ」
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