わたしは一生に一度の恋をしました
「でもわたしのお母さんが知り合いに聞いたらしいけど、あなたのお母さんと真一くんのお父さんが付き合っていて、あなたのお母さんはすがたをくらませた。ちょうど十八年前に。あなたの誕生日からなら、一月か二月には妊娠していたのよね」

 西岡は得意げな顔で言った。彼女はただ、真一がわたしを好きだという噂を否定したいだけなのだろう。

「違う。それに高宮くんがわたしに告白したというのもデマ。分かった?」

 いらだちを隠せないわたしの言葉に西岡は言葉を詰まらせた。彼女は鋭い視線をわたしに向けた。

「それなら、あなたのお母さんはやっぱり二股をかけていたわけだ」

 わたしの心の中で何かが燃え上がるのを感じた。

 二股なんてかけていない。だが、それを否定したらわたしが真一と異母兄弟ということを知られてしまうだろう。

 だからわたしは否定することが出来なかった。

「あなたたちには関係ないでしょう? これ以上人のことを詮索するのは止めたら?」

「どうして? 本当のことでしょう。あなたのお母さんが遊んでいたって。もしかしてお父さんが誰か分からないとか?」

 西岡さんはくすりと笑った。

 わたしは思わずこぶしを握り締めた。

 もうこれ以上こんな話に関わりたくなかったし、巻き込まれたくなかった。

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