わたしは一生に一度の恋をしました
「嫌なら謝る」

「嫌じゃないけど、でも正直、ほのかとは姉弟としてではなく、赤の他人として会いたかった。そしたら誰に気を遣うわけでもなく、もっといろんなこと話せたのに」

「そうだね」

 わたしは頭をかいた。


「本当はもう一つ言いたいことがあったんだ」

 真一は唇をそっと噛んだ。彼は少し前を置いて、唇を再び開いた。

「由紀、転校することになった。母親も一緒に引越しする。僕と父親は残る」

「残って大丈夫なの?」

「僕はね。でも」

 彼はそこで口ごもった。

 由紀は恐らく耐えられないと言いたかったのだろう。

 だが、彼の複雑そうな表情はもう一つ事実を告げている気がした。

 わたしは心の中に思い浮かんだことを彼に問いかけた。

「三島くんはついていくの?」

 わたしの言葉に真一は首を横に振った。

「分からない。でもあいつの性格を考えると多分そうする」

「そっか」

 わたしにはそれしか言えなかった。

 三島さんは由紀と一緒にこの町を離れるだろう。由紀が落ち着くまで。そして彼女が望めば結婚をするかもしれない。

「教えてくれてありがとう」

 真一は複雑そうな表情を浮かべて微笑んでいた。

 わたしは結局、卒業式には出席しないことにした。幸い、学校に荷物はもう置いていない。おばあちゃんにそのことを伝えると、おばあちゃんは「分かった」とだけ告げていた。


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