わたしは一生に一度の恋をしました
 十九年前にわたしのお母さんはお父さんのもとを去り、お父さんは真一のお母さんと結婚をした。

「でも、あんな由紀さんを見てしまったら、わたしは三島くんと一緒にいることができない。あの人にとって由紀さんは妹みたいなものなんだと思う。わたしは大丈夫だよ」
「泣いていたのに?」


 彼の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。彼は唇を噛むと大粒の涙をこぼしだした。

 彼がはっきりとなくのを初めて見た。

 彼は唇をきゅっと噛んだ。

「ごめん。でも、どうしても許せなくて。母親と同じことをしようとしている由紀も。それを止めようとしない母親も。現状を変えることができない僕自身も。だから、周りのことなんか気にせずに、自分の気持ちを貫き通してほしかった。それが僕のエゴにすぎないことも分かっている」

「ごめんね。でも、ありがとう」

「礼を言われることなんてなにもしてない。むしろ責められてもおかしくないのに」

 わたしの中で何かがすっと落ちた。いつも彼はそうだったのだ。

「そんなことないよ。今までわたしを何度も助けてくれたでしょう。学校への道を迷っていたときも案内してくれた」
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