わたしは一生に一度の恋をしました
 わたしはずっと忘れていた。三島さんの存在が、彼との間に起こったことが大きすぎて、失ったものばかりを追い求め続けていた。だが、当たり前のようにわたしを支えてくれていたのは彼だけではなかったのだ。

彼は、わたしが迷ったときにすっと現れ、導いてくれた。今もそうだ。自分の存在にまよっていたわたしの心を、当たり前のように救ってくれた。

 ここに来なければよかったなんて本心じゃない。わたしがここに来たことで多くの人が傷ついただろう。それでも、わたしは嬉しかったのだ。おばあちゃんにとってわたしはいらない子ではなかったということや、お父さんがお母さんを愛してくれていたと知ったことが。三島さんに会えて、生まれてはじめて人を愛したことが。

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