わたしは一生に一度の恋をしました
 わたしは彼の手を取った。

 彼の目からより多くの涙が溢れ出した。

「ごめん。本当にほのかには敵わない気がするよ。調子が狂ってばかりだ」

 彼は前髪をかきあげると、下唇を噛んだ。

 彼は目に涙を浮かべたまま、苦笑いを浮かべた。

「そんなことないと思うけど」

「あるよ。今もそうだ。本当、ほのかといると僕はめちゃくちゃ格好悪くなる」

 彼はそういうと笑い出してしまった。

 わたしには彼が笑った意味が分からなかった。

 彼は目にたまった涙を拭った。

「僕もほのかに会えてよかったと思っているよ」

 彼はそう微笑んだ。

「ありがとう」

 改めてそう言われると照れてきてしまった。

「今でもお姉さんというのは信じられないけどね」

「真一はしっかりしているからだろうね」

「それだけじゃないけど、ほのかのお母さんが父さんと、僕の母さんが別の人と結婚をして、僕が生まれていたらどうなっていたんだろうと思うことがたまにある」

「どうなんだろうね。それでもきっと仲良くなれたと思う。今みたいに」
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