わたしは一生に一度の恋をしました
 旅立ちの日、わたしは荷物を纏め、階下に下りていった。

 おばあちゃんは礼服に身を包んでいた。そして、いつもはしない化粧をしていた。

「準備はできた?」

 わたしはおばあちゃんの言葉に頷く。わたしは荷物を床の上に置くと、溜め息を吐いた。

「送って欲しい荷物は段ボール箱に詰めたけど。ダンボールは下に運んでこなくていいの?」

「あの子が手伝ってくれるってさ」

 おばあちゃんは笑顔でわたしの言葉に応えていた。あの子とは真一のことだ。わたしを運んできた日から真一と彼女はすっかり打ち解け、仲良くなっていた。あの小屋で話をした二日後にやってきて、荷物を送るなどの手配をしてくれると言っていたのだ。


「一家もろともすっかり真一と仲良くなったね」

 わたしの言葉におばあちゃんは笑顔を浮かべていた。

 わたしが時計を見ると、時刻は十二十分を示していた。わたしは十二時半過ぎにバスに乗ることになっていた。バス停まで家から歩いて十分ほどかかる。

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