わたしは一生に一度の恋をしました
 思わず背後を振り返る。だが、もうその姿を視界にとらえることはできなかった。わたしの思いが幻影となって現れたのかもしれない。だが、あの人があそこにいたと信じたかったのだ。

 頬から伝うものを感じ取り、自分が泣いているのだと自覚した。

 全てに後悔はしていないはずだった。

 だが、一つだけ。

 気持ちを噛みしめ、そっと唇を噛んだ。

 言えなかった気持ちを、心の中でそっと呟いた。

 あなたがずっと好きでした、と。
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