わたしは一生に一度の恋をしました
 彼は十年前と変わらない目の輝きを今でも保っていた。

「元気だったか? 本当、昔のままだな」

 真一はわたしを見て面白そうに言った。

「そんな一、二か月じゃ顔なんて変わらないって」

 わたしがそう言うと、真一はまたあの頃と変わらない笑顔を浮かべた。

 高校生の頃は学年が一つ下だという実感があったものの、今となってはそれさえも疑いたくなるほど彼は落ち着いていた。元気で明るい男の子から落ち着いた男の人に変わっていた。老けたというよりは落ち着きがでたという言葉がしっくりきた。しっかりしていた内面が年齢の増加に伴って外に出てきて、年相応の雰囲気を醸し出したのだろうか。

「スーツ姿が良く似合うようになったね」

 お返しとばかりに口にしたわたしの言葉に真一は笑っていた。

「僕も二十七歳だからね」

 真一は弁護士になっていた。彼はこの近くの国立大学を大学卒業後、ロースクールに通い司法試験に合格した。そして、この近くにある小さな事務所に就職していた。

「それを言ったらわたしは二十八歳だよ」

 わたしの言葉に真一は笑みを浮かべていた。

「ほのかは童顔だから、今でも二十歳くらいでも通用すると思うよ」

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