わたしは一生に一度の恋をしました
「わたしと真一の幼馴染です」

 わたしには幼馴染というものがいなかったので羨ましい気がした。ずっとあのアパートの住んでたため、近所には同級生も住んでいたし、それなりに仲の良い友人もいた。だが、学校が変わってしまえば交友関係が続くことはなかった。わたしが人に壁を作る人間だったからかもしれない。


「クラスは三年二組だそうです。担任の先生は柴田先生という男性の先生ですよ。中に入ってきてほしいそうです。すぐに先生も来ると思います。わたしは先に教室に行きますね」

 わたしがお礼を言うと、由紀はペコリと頭を下げて教室に向かっていった。

 わたしが中に入ろうとすると、長身の男性に声をかけられた。

「君が藤田さんか。僕が担任の柴田亮大です」

 彼は人懐こい笑顔を浮かべた。

 わたしは彼と中に入った。校長先生から話を聞き、彼と一緒に教室に向かうことになった。わたしが教室の中に入ってくると、人の視線が向けられているのが分かった。そんな視線を直視できないでいた。

 名前と以前通っていた高校の名前を告げると、柴田先生はわたしに後ろから二番目の空いた席に座るように告げた。持っていた荷物を抱えたままその席に座ると、隣の席を見て思わず声を上げそうになった。
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