わたしは一生に一度の恋をしました
「藤田さん、初めまして。わたしは中田真理」

 小柄な女の子が親しげに話しかけてきた。

「わたしは西岡真衣」

 そう言ったのは長身の女の子だった。彼女は強張った笑みを浮かべると言葉を続けた。

「今朝、真一くんと一緒にいたけど、知り合い?」

 今朝一緒に居るのを見たのだろうか。わたしはその言葉に首を横に振った。

「道を案内してもらったの」

「やっぱり。真一くん優しいし」

 西岡真衣と名乗った少女は安心したのか、強張っていた顔が突然笑顔になった。彼女はそれを聞きたかったのだろう。彼女の表情を見て、真一に好意を持っているのではないかという気がした。

 三島さんは席を立つと、そのまま教室を出て行った。
 そんな三島さんを西岡さんは目で追った。

「この学校で独り身の人間で一番格好良いのは真一くんだから、彼人気あるのよ。優しいけど誰とも付き合わないし。三島くんも格好良いけど彼には高宮さんが居るからね」

「高宮さんって高宮由紀さん?」

 わたしの言葉に中田真理が頷くと、身を乗り出して話かけてきた。彼女はため息混じりに肩をすくめた。

「あんなに可愛い子にはかなわないよね。お嬢様だし。一年のときは高宮さんのことを知らない人も多かったから、狙っている人も多かったけど、今となってはね」

「真里は狙ってたもんね」

 西岡さんは中田さんの腕を肘でついた。

「わたしだけじゃないでしょう」

 中田さんは頬を膨らませた。
 目を惹く美少女に、不愛想だがかっこいいことは認めざるおえないクラスメイト。
 由紀もまんざらではない様子だった。
 お似合いといえばお似合いなのだろう。

 わたしは二人の会話にあいまいに微笑んでいた。
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