わたしは一生に一度の恋をしました
「ここか?」

 わたしは三島さんの言葉に頷いた。

「ピンと来ない」

「ここはな」

 三島さんはそう言うと、図に線を何本か書き加え、説明をし始めた。三島さんの説明は学校の先生の説明よりも端的で分かりやすかった。

「なるぼど。ありがとう」

 わたしはその式を書きあげると、計算して三島さんに見せた。わたしの書いた式を目で追いながら頷いた。

「いいよ」

 わたしはその言葉に胸を撫で下ろし、千恵子さんの持ってきた麦茶に口を付けた。いつの間にかカラカラに乾いていた口の中に水が潤った。

「教えるのが上手いね」

「習ったところだから」

 わたしの言葉に三島さんは淡白に答えた。

「一つずつ教えてもいいけど、教科書を読めば一通り理解できるとは思う。こことここ、ここを解いてきれくれ。これが解けなかったら基礎的な理解自体が追い付いてないということだろうからな」

「分かった。まさか教科書が終わっているなんて思いもしなかった」

「割と受験に力を入れているからな。分からないことがあったらいつでも教えてやるよ」

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