わたしは一生に一度の恋をしました
 わたしはその言葉に微笑み、頷いた。わたしが考えていたような怖い人ではないのかもしれない。

「聞いていい?」

 三島は自分の傍に置いてあった麦茶に口を付けた。
 否定されなかったため、わたしは自分の気持ちを言葉で紡ぎ出した。

「大学、どこ希望しているの?」

「教えない」

 三島はあっさりと答えた。彼は一気に麦茶を飲み干してしまった。

「ケチ」

「俺は親しい人にしか自分のことは教えない主義」

「高宮真一さんと由紀さんと仲良いんだっけ? あの人たちなら知っているのかな」

「親しいって言うか幼馴染だよ。真一とは仲がいいほうだとは思うけど。志望校も真一が知っているから、由紀も知っているかもな」

 名前で呼んだことに少なからずドキッとしていた。

「そんなくだらないことしか聞くことがないなら、もう俺がいなくても大丈夫だな。まあ、勉強は教えてやるよ」

 彼はそう言い放つと、立ち上がり、さっさと部屋を出て行った。
 階段を上がる音が耳に届いた。

「そっけない」

 わたしはぽつりとつぶやいた。
 そのつぶやきに呼応するように、客間の扉が開いた。

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