わたしは一生に一度の恋をしました
 彼女はそういい残すと部屋を出て行った。そして、二分ほどでアルバムを手に戻ってきた。

 千恵子さんはアルバムをわたしに差し出した。わたしはそのアルバムを受け取り、中身を覗くいた。そこにはパッチリとした目をした、少し小太りな赤ん坊の写真があった。顔自体は可愛かったが、どれも無表情で今の彼の姿を彷彿とさせた。

「面影ありますね」

「この頃からあまり笑わない子からね。親が抱き上げるととにかく嫌がって暴れたり、噛み付いたり。本当苦労したわ」

 わたしは千恵子さんの言葉に笑うしかなかった。ページを捲っていくと、赤ん坊の写真から五歳くらいの子供の写真に変わった。

 五歳くらいの三島さんの傍には髪の毛が黒より若干薄い色の、目がパッチリとした女の子が立っていた。素直に可愛い子だと思う。

「この子は、高宮由紀さん?」

「知っているの?」

 千恵子さんの表情が一瞬曇ったが、次の瞬間にその表情は先ほどの明るい表情に戻っていた。何かあったのだろうか。気にはなったが、わたしはそのことに触れないようにした。

「今日、学校でたまたま会って。顔がそっくりな双子の弟さん居ますよね? 真一って名前の」

 千恵子さんはアルバムを手元に引き寄せると、ページを数ページ捲った。そして、わたしにアルバムを差し出した。そこには同じ顔をした二人の子供と、三島さんが写っていた。そして、由紀の視線は相変わらず三島に向けられていた。

「三人は幼馴染でね、小さい頃から、一緒に良く遊んでいたの」


 彼女はそっと唇を噛んだ。
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