わたしは一生に一度の恋をしました
「幼馴染か。羨ましいな」

「ほのかちゃんにはそういう子いなかったの?」

 わたしは首を縦に振った。

「友達はいたけど、わたしはあまり人と打ち解けられなかったから」

 あまり自分の悩みを人に相談することはなかったのだ。

「そう。きっと自分をしっかり持っていたのね」

 わたしはその言葉に驚き、千恵子さんを見た。

「あなたのお母さんもそうだったの。しっかりしていて、自分できちんと決めたの。人に相談するって言う意識があまりないのよね。そういう面では将はあなたのお母さんに似ているかも。わたしも高校卒業して直ぐ、今の主人と結婚したのだけど、その前まで千明には良く相談に乗ってもらっていたわ」

 千恵子さんは寂しそうな表情を見せていた。そんな千恵子さんを見ていると、わたしが自分を育ててくれたお母さんを知っているつもりでいても、自分の知っている母親は一部分でしかないのかもしれないことを思い知らされた。

「由紀ちゃんはこの子はなぜか将に懐いてね、良く将と結婚するって言っていたの。でも将が嫌だと連呼するから、何度も泣き出しちゃって大変だったのよ」

 千恵子さんの言葉がわたしは意外だった。あのしっかりとした印象を受ける由紀にそんなことがあったとは想像できなかった。

「嫌って言わなくてもいいのに」

「将は別の女の子が好きだったからでしょうね」

「初恋なんだ」

 わたしの言葉に千恵子さんは目を細めた。
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