わたしは一生に一度の恋をしました
 わたしの言葉に三島さんは優しく微笑んでいた。

「でも三島くんって全然最初とイメージが違う。もっと怖い人だと思っていた」

「壁、作るからかな。あまり人付き合いが好きでないから。でもまだお前相手なら普通に会話しているほうだと思うよ」

「そうなの?」

 わたしは自分で尋ねてみて、三島さんが確かにクラスの人間とはほとんど話をしていないことを思い出す。以前真一と話していたときもこんな感じだったのかもしれない。

「比較的お前には何でも言えそうな気がする。幼い頃からお前の写真ばかり見せられて育ったからかもしれないけど」

 顔が火照るのが分かった。体中が熱されたみたいに熱くなる。

「そんなにあの写真見ていたの?」

「しょっちゅう見せられていたよ。本気か冗談か分からないけどあなたの妹ですよ、とか言って。最近は流石になくなったけど、相変わらずお前の写真はいっぱいあるな」

「すごく恥ずかしいのだけど」

 三島さんはわたしを見て声をあげて笑っていた。


「そんな写真を見せられたからかもしれないけど、お前のこと昔から知っているって気がする。だからお前の前では笑ったり出来るのかもしれない」

 同じことを真一も言っていた。真一の言っていた人というのは千恵子さんのことだったのだろうか。

 三島さんの言葉がとても恥ずかしかった。だが、同時に左胸の辺りにほんわかとした温もりが宿るのが分かった。

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