わたしは一生に一度の恋をしました
 それから三島さんは時間が合えばわたしに勉強を教えてくれるようになった。場所は専ら三島さんの家だ。

「できたか?」

 わたしはそこで我に返った。三島さんを見ると、彼は呆れた顔でわたしを見つめていた。

「出来たよ」

 わたしは手元にあったノートを三島さんに差し出す。三島さんの視線がノートに注がれていた。

 彼は今何を考えているのだろうか。
 そんなわたしに無言の回答を示すかのように、彼は眉間にしわをよせた。

「残念。ここで計算間違っているよ」

 三島さんはわたしが解いた回答の一行目の計算式の答えの部分に赤いペンで印を付けた。

「ここ以外は良く出来ているけど、計算間違いは気を付けたほうがいいよ。センターとかでは全てだめになってしまう可能性があるし」

「そうだね」

 わたしは三島さんからノートを受け取るともう一度計算をした。最後の答えを出すと三島さんにノートを見せる。三島さんはわたしのノートを見て、頷いていた。

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