わたしは一生に一度の恋をしました
 わたしは三島さんの言葉で心が軽くなった気がした。

「そうだね」

 わたしの言葉に三島さんは微笑んでいた。そのとき三島さんの携帯電話が鳴り出した。だが、三島さんは特に反応を示さなかった。

「電話鳴っているよ」

「多分由紀だよ。あいつ二十通以上メール送ってくるからな。後で纏めて返事しておくよ」

「気まぐれだね。わたしのときは比較的直ぐ返事くれるのに。運が良いのかな」

「ま、それはお前だからな」

 三島さんは笑うと、また先ほどのノートに目を向けていた。

 その言葉にどんな意味があるのかはそれ以上聞かなかった。

 わたしにとって都合良い方向に物事を持っていきたかったのかもしれない。

 わたしは志望校を地元の農学部に決めた。三島さんと同じ大学だった。ここからは少し距離があるので一人暮らしになるかもしれない。

 おばあちゃんにそのことを打ち明けると、喜んでくれているようだった。

 わたしは三島さんのようにしたことが具体的に決まっているわけでもない。ただ単に植物が好きだからという安易なものだった。だが、具体的に何かを決めないと何も始まらない気がしたからだった。

 三島さんにそのことを伝えると、彼は笑顔で頑張れと言ってくれた。
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