わたしは一生に一度の恋をしました
 真一はその言葉には答えずにやっと笑った。彼の表情が全てを物語っている気がした。真一はわたしと三島さんが最近頻繁に一緒にいることを知っているのだろう。


「じゃ、先輩と仲良くね」

 何も言えなくなるわたしの姿を見て、真一は面白そうな笑みを浮かべていた。わたしは真一から子供扱いをされている気がする。

「わざわざ案内してくれてありがとう」

 真一はそう言うとその場を去った。わたしは何も言うことが出来ずに彼の後姿を見送っていた。

 わたしは我に返り、箒とちりとりを探しに行くことにした。
 ここで三島さんが来るまでぼんやりと突っ立っておくのも気が引けたためだ。
 

 ここに来た初日に掃除をしたが、あのときは千恵子さんが持ってきてくれたこともあり、わたし自身その在処を知らなかった。

 わたしは広い敷地内を壁まで歩き、壁沿いに箒を探すことにした。だが、なかなか箒の在処を見つけることは出来なかった。

「何やっているんだよ」

 わたしは良く聞く声に呼び止められた。振り返るとそこには三島さんが立っていた。
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