クードル



ーピーンポーン

無機質な今一番聞きたくない音が鳴った。
意を決して、ドアを開ける。

ドアを開けたはいいけど、モニターの場所が分からない。

リビングだろうと思い、リビングに向かう。



一歩、遅かった。
義兄が出ていた。

「はい」

ボタンを押して、応答していた。

『縫〈ぬい〉居ますか?』

聞き慣れた友人の声が聞こえた。

「は?」

『え?上坂さんのお宅ですよね?』

「ああ」

「あ、のっ」

あたしは、義兄に話しかけた。
話しかけるしかなかった。

あたしのことを、あたしの名前を知らないこの人は多分このまま友人を帰しかねない。

あたしの友人と分かっても、帰さないで欲しいけど。

「縫です。と、友達なんで、上げても、いいですか...?」

人見知りのあたしがここまで頑張れたのは多分友人のおかげ。

心臓ばくばくだし、汗もすごいし、フラフラだけど、友人のためならやるしかない。



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