物語はどこまでも!
(六)
「うわぁ、もうここまで出来上がっているんですね」
感嘆と呆気が混ざった声を出したのも、つい一週間前まで壊滅的被害を受けたリーディングルームがしっかりとした形をつけているからだった。
「聖霊様々だろうな。普段ならば人間の仕事として行うべきなのだろうが、事が事だ。迅速に対応すべきと、上位聖霊『ブック』の権限で派遣されたらしい」
独り言とならなかったのは、私と同じくリーディングルームの様子を見にきた彼女のおかげだった。
「それならあなたも、迅速に治してもらうべきかと思いますが……」
建物と同格の甚大なる被害の持ち主は、私の言葉に、布で固定してある左腕を見せびらかすようにして苦笑する。
「ああ、確かに治してもらうことも出来たが断った。己の未熟さの戒めとして、自然治癒するまで療養していようと思っていたのだがーー」
「ここにおりましたかあああぁ!」
びゅんっと、神風のごとくやってきた青い羊が、野々花に激突した。
「ノノカ!部屋から出てはなりませぬと申したはずっ!本来ならば危篤状態の身ですよ!完治するまで聖霊の治療を受けなければならないとあれほど言っていますのに!ーー某も心を鬼にしましょう!問答無用で、寝ていただきます!」
すうぅっと、息を吸い込むマサムネの体がどんどん膨らんでいく。話には聞いていたけど。
「巨大モフモフ……」
「そうだろう、そうだろう。マサムネはまた一つ美しく成長したのだ。おっと、このモフモフに触れてくれるなよ。これは私だけの物なのだ。勇ましく雄々しい我が愛すべきネイバーに触れていいのは、このわた、し、だ、け……」
毛に沈む野々花を引きずり出しておく。親友がこれ以上、だめ人間になるのを阻止しなければならない。
マサムネは不満そうだが、目覚めた野々花に少しだけ話させてくれと言われれば、体を萎めてくれた。