物語はどこまでも!
「お前の言い分もよく分かる。わざわざ呼び出し、あれほどの熱弁を聞いた以上、何の収穫もなしに帰るわけにもいかないな。ああ、分かる。けどな、雪木。最初に言ったはずだ。『もう手遅れだったよ』と」
言ってたようなないような、覚えてもいないことだけど、結局のところ。
「まさか、司書長に見つかったのですか」
「本当に何たるタイミングだか。見目は麗しく若々しい年端のくせして、中身は老体。足腰が痛むからと、機械での移動でさえ渋るお方だ。リーディングルームには滅多に来ないだろうと、お前を呼び出したのに。マサムネが行ったのと入れ違いで、長が来た。他図書館の長との定例会のため、しばらく出るとかでこちらに顔を出したそうだ。
もちろん、冷静沈着を装っていたが、なかなかに賢い人だ。挨拶もそこそこに、『隠していては、無理にでも暴きたくなるのが人間というものだと思わないー?』とくれば、観念するしかないさ。お前に見せてからと思ったが、先に司書長に持って行かれてしまったよ」
「でしたら、私は本当にあなたの話を聞くためだけにここに呼び出されたというわけですか……」
仕事の合間を縫ってわざわざここまで、とは口にしなくても察したか。お詫びにマサムネを抱っこ出来る権利をもらった。
はあと、ため息一つ。
この程度のことで怒るほど狭い心は持っていないが。
「一つ、言っておきます」
「なんだ?」
「セーレさんは私のネイバーでも、ましてや旦那でもありませんから、付きまとわれているだけですから、金輪際お間違えのないように」
「お前はまだそんなことを言って。何やかんやでセーレといるときのお前はーー」
素直じゃないなぁと言う人には、マサムネを誘拐して言うことを聞かせるに限ります。