物語はどこまでも!
恥ずべき点だからこそ、何事も率先して一人で行おうとしているが、分不相応な仕事を押しつけられているのも事実。周りが私を有能扱いするのは、彼とセットで見た話。逆説、彼がいなければ今頃私はリーディングルームで寝ている子どもたちの相手をしていたことだろう。
彼なしの私など、無能な頑張り屋さん程度の能力しかない。事実なのに、それが悔しくて分不相応な仕事だからこそ一人でやり遂げ結果を残したかった。
「とか言いつつも、最後に結局、俺を頼っちゃう雪木が可愛いよ。物凄く葛藤するあの表情とかたまらない。頼りたくないけど仕事を終わらせるためにと、俺しか頼る人はいないからと、けど一人で何とかしなきゃとも考え苦悩し、そもそも図書館と関係ない俺を頼ってしまっていることへの罪悪感まで持っちゃって。思わず、『助けてあげる代わりに』と交換条件を出してしまうほど嗜虐心をくすぐられる表情だよ。ーーあ、もちろん俺は雪木の願いを何でも聞くよ。悪い意味で虐めたいわけじゃないんだ。ただ、もう俺なしでは何も出来なくなればいいのにと思ってしまうだけ」
「人が真剣に考えているのに、あなたはー!」
バカみたいな思考だったと、切り替える。
「で?今日はどうしたの?」
「……、シンデレラが、舞踏会に来ないそうです」
「そう。ーーそれと、君のお友達から何か聞いていない?」
彼にとっての本題がそちらだったか。
聞く前に辺りを見つつ、誰もいないのを確認している。
「この世界に『訪問』をしているのは私だけですよ」
一冊の物語に複数人『訪問』を行うことは可能だが、事件解決のためこの本は今、私が持っている。
物語の世界の単位は、一冊。
この本を持って眠りについた時、周りには誰もいなかった。他の図書館スタッフが途中から『訪問』ーー『割り込み』をするには、同じ本を手にして目を瞑ることになるが。