物語はどこまでも!
「私の薬指に皮を巻き付けるのはなしです、よ」
「ハハッ、あんまりイヤイヤするとしたくなっちゃうんだけど。大丈夫しないよ」
どこか肩を落としながらも、諦めていると割り切っている彼は笑顔だった。
「でも、羨ましいな。あんな虫けらが君の世界に行けるだなんて」
「野々花は、何かあるんじゃないかとーーその、大変なことが」
「その時こそ、俺が君の世界に行くべきなのかもね」
「えっ」
「フラグ、立ててみた。こうしとけば行けるかなって。ヒロインがピンチな時、ヒーローが助けるべきだろう?」
「現実はそう甘くないんですよ……」
「夢がないなぁ」
「子供のままでは、大人になれないんですよ」
現実主義で結構。可愛げのない私に幻滅してしまえと思ってもみたが。
「俺は本当の君を知っているよ。優しくて、かわいらしい頑張り屋さん」
恋は人を盲目にするらしい。
あばたもえくぼ。何をしても可愛く映るそうだが、彼の場合は出会った時から私を美化し過ぎている。
本当の君を知っている。
彼が時折、私に使う言葉だ。本当の私なんて、現実主義の無能な頑張り屋さんだというのに。
「難しい顔してるね」
「あなたのせいです」
まったくもってそう。顔を見られないように、背を向けて歩く。
後ろからは含み笑いと、足音。今日もついてきてくれるーーじゃない、付きまとうらしい。