物語はどこまでも!

「シンデレラの家なら、そこの角を右に曲がった先にある。三階建ての立派な建物だ」


彼の言葉通りに立派な建物があった。
城下街とあって富裕層が多い。シンデレラも本来ならば、貴族の娘であるのだが意地悪な継母と連れ子二人にいじめられている。

今日はお城で舞踏会。本来ならば、魔法使いと出会って今頃お城に向かうべきなのだけど。

「意地悪な継母たちが、自分が王子様と結婚したいがため、シンデレラを閉じ込めているのでしょうか?」

「あー、それは違うと思うけどね」

推測を苦笑いで否定された。

「では、いったい?ーーあ、いえ。今回は一人で何とかしますので、セーレさんはついてこなくてもいいです。あなたがいると、残虐的ストーリーになるかもしれませんから」

危険危険と、引き離す。
抵抗されるかと思ったが、彼はふと大通りに目をやったあと、すんなり私の言い分を聞いてくれた。

「分かった。何かあったら、『大好きなセーレさん、助けてにきて』と叫んでくれ」

「それはもはや、『叫ぶ』じゃなくて『呼ぶ』です」

一人になり、立派な建物を前に「たのもおおぉ!」じゃなかった。上品にノックをしようとーー

「シンデレラは、渡さないわ!」

華やかなドレスを身にまとった女性が、扉を大仰に開けた。

開き戸のため、目の前(外)にいた私に扉が直撃。立派な建物に相応しい頑丈な作りであったのが不幸中の不幸。ものの見事に負傷した。(鼻から)

折れた!?と本気で心配したが、人って頑丈ですね。と冷静になれるほど、鼻の形は変わっていないし、どうやら鼻血も出ていないようだ。負傷訂正、無傷。あの衝撃を受けても痛いだけで済むとは、私って頑丈ですね。

「つっー!」

「きゃー、お母様!扉はもっと上品に開けなければ」「きゃー、お母様!うら若き乙女が痛みに悶絶していますわよ」「きゃー、ごめんなさい!とりあえず、中に入って!」

今、冷やしますわよ!と、ズルズルと引きずられた。私の部屋の何倍も広い玄関ホールにある赤いソファーに座らせられる。

「きゃー、お母様!冷やすための氷がなくなっていますわ」「きゃー、お母様!お客様にお出しするお菓子が切れていますわ」「きゃー、大変!とりあえず、濡らした布とお紅茶だけでも持ってきて!」

はい、お母様!といなくなる二人。
多分は、あの二人がシンデレラの異母姉妹で、目の前であたふたしている女性が継母。

お話では大変意地悪な人たちと語り継がれているけど。

「きゃー、大丈夫!?痛くないかしら?お顔に傷はなくて?あるなら魔法使いに治してもらうから安心してね!きゃー、良かった!傷はないみたいね!きゃー、安心したわ!綺麗なお顔は無事よ!ちょっと赤いけど」


「きゃー、お母様!冷たい冷たい水で濡らした布を持ってきましたわ」「きゃー、お母様!お詫びも兼ねて最高級の茶葉で淹れた紅茶をお持ちしましたわ」

「きゃー、あなたたちったらなんて気が利く子たちなの!もう、本当に可愛らしいわ!」

「きゃー、お母様!もったいないお言葉です」「きゃー、お母様!お美しいお母様の子として当然です」

「きゃー、幸せだわ!こんなにも可愛らしい娘たちに囲まれて、そうして可愛いシンデレラが娘になってくれたのだから!」

「きゃー、お母様!私たちも幸せです」「きゃー、お母様!私たちも妹が出来て幸せです」

シンデレラバンザイ!と最終的にまとまった三人。シンデレラは、優しい優しい継母たちに囲まれて幸せにくらしましたとさ、めでたしめでたし。にまとまるぐらい、シンデレラ愛が伝わってきた。

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