物語はどこまでも!
「あの……。申し遅れました。私、図書館『フォレスト』にて司書補統括をしている、彩阪雪木(あやさか・そそぎ)と申しますが。今回、シンデレラさんが舞踏会に」
「シンデレラは、渡さないわ!」
はい、振り出し。
先ほどまで友好的に思えたけど、一気に敵対。それでも紅茶は淹れてくれるので、話し合い可能なようだ。
「言葉からして、あなたたちが閉じ込めて、シンデレラさんを舞踏会に行かせないと受け取りますが」
「し、シンデレラは、風邪を引いているの!そんな状態で舞踏会には行かせられないわ」
「きゃー、お母様!機転が利きますわ」「きゃー、お母様!そう言えば諦めなければなりませんよね」「きゃー、あなたたち!それを言ってはダメよ!」
「本当のことを話してもらえませんか?」
責めるつもりはなかったけど、顔つきが厳しかったか、ややあって継母さんが観念したかのように口を開いた。
「シンデレラは、真実の愛に目覚めたのよ」
「……はい?」
「シンデレラは王子様とではなく、魔法使いと結婚したいそうよ!」
バンっと机を叩いて熱弁を開始する継母さんだった。
「お母さんを亡くしてまだ日が浅く、心の傷も癒えていない内に私たちが来て、美しさを妬んだ私たちによってたかって意地悪をされてしまう可哀想なシンデレラ。本来なら、貴族の娘として誰もが羨む生活をしていいのに、屋根裏部屋に住まわされ、奴隷のように扱われるシンデレラ。そんな彼女の幸せのためなら、私たちは例え図書館の方々の命令であっても、シンデレラを守るわよ!」
「きゃー、お母様!凛々しいですわ」「きゃー、お母様!私たちもシンデレラの幸せのために頑張ります」
「そうよ!シンデレラは幸せにならなきゃいけないのよ!本当なら虐めたくなんかない!屋根裏部屋ではなく、私たちと同じベッドで並んで寝たり、可愛いドレスを着せてあげたり、一緒にお買い物したり、きゃっきゃっうふふな生活を送り続けていきたいのに……!物語はなんて残酷なのかしら!図書館の方、これが私たちの役目と我慢し、今までやってきましたが、もうそうも言っていられないのよ!シンデレラの最初で最後の願いを叶えるため、ワタクシたちはあなた方にシンデレラを渡しません!」