物語はどこまでも!
「シンデレラは屋根裏部屋ですね。この階段(先)ですか?」
「ええ、階段を三階まで上ってもらって、左の廊下つきあたりにーーって、きゃー、つい口が!」
「きゃー、お母様!素直すぎますわ」「きゃー、お母様!でも憎めない素直さですわ」
「ダメよ、お待ちになって!図書館のお嬢さん!きゃー、いやー!うら若き乙女なのに結構力強いわ!」
「図書館業務は案外、重労働なもので」
知力よりも、体力と腕力が必要な職務だったりする。定期的な清掃は、本全てを棚から下ろすことから始めるからなぁ。
このまま継母さんごと階段を上がるかと思っていれば、姉妹二人が立ちはだかった。
「きゃー、お母様!今、助けますわよ」
「きゃー、お母様!私たちも加勢致しますわ」
そんな彼女たちの手には、それぞれバケツとはたきが。
「きゃー、あなたたち!まさかそれは!」
「いい加減、『きゃー』と叫ぶの禁止でお願いします」
「き……こほん、お母様の思っている通りですわ!このバケツの水は、昼間屋敷中の廊下を拭いた水が入っています!」
「き……げほん、お母様が考えている通りですわ!このはたきは家中のホコリを取ったものです!」
「き……えっほん、ま、まさかあなたたち、お客様にそれで抵抗するつもりなの!?な、なんて恐ろしいことを!お客様が汚れてしまうわよ!それはもう、汚く!」
「でも、お母様!シンデレラのために私たちは心を鬼に致しますの!」「そうよ、お母様!シンデレラの幸せのために私たち」
「「まいりますわ!」」
「そ、そう、決心は固いのね。なら、ワタクシは!」
後ろから羽交い締めにされた。
「ワタクシが図書館の方を捕まえている間にさあ!」
「お、お母様!?そんなことをすれば、お母様にまで汚水がかかってしまいますわ!」「お、お母様!?下手をすれば、はたきのホコリを吸ってしまいますわ!」
「構わないわ!例えこの身が汚れ咳き込もうとも、愛するシンデレラのためなら!っ、さあ!ワタクシごと、やりなさい!」
おかあさまー!あなたたちー!と涙必須なやり取りの真ん中にいる私はいったいどうすれば……。
逃げる、逃げない、撃退。の選択肢の中から、決断を迫られる。ここは彼女たちの思いを挫かないよう、甘んじて汚れるべきか。うーんと、悩んでいれば。