物語はどこまでも!
『痛くはない』『眠るだけ』『また会える』『始めるために終わろう』
様々な言葉は総じて、『“だから”、気に病むな』としたものばかり。
鼠たちにそう言わせてしまうほどーーいつからか、言葉すらも傷つけてしまうと分かってしまうほど、青年は泣いていた。
笛を吹きながら、泣いていた。
物悲しいメロディに謝罪を込めて、メロディに留まりきらなかった想いが涙となって、今日も青年は鼠たちを湖に落としていく。
最後の一匹が、青年の足元に擦りよう。
「キミは、悪くない」
そう話した鼠。端的にはっきりと、ただそれだけの事実しかないんだと、最後の一匹が湖に飛び込んだ。
演奏が終わる。残されたのは平面の湖と、冷たい夜風。涙が凍るほどの気温ではないはずなのに、眼球から凍てつくようだった。
「『悪くない』だって?君たちを殺したあと、子供たちを誘拐するような奴のどこが……」
定められたストーリーがある。
永久的に紡がれる物語がある。
青年は、舞台上の演者である。
青年は、不可欠な存在である。
「これなら、酷く罵ってくれた方がいいのに……。君たちが優しい過ぎるから、より後悔しーー“何が何でも”と思ってしまう」
涙を拭う。腫らした目で、後方を振り向けば、一人の男がいた。
水面の月に相応しい顔つきをした男は、ただただ黙って青年を見ている。その相変わらずのさまに青年は、笑ってみせた。目に涙を浮かべて、笑って見せた。
「なあ、セーレ。これは“あんまり”だと思わないかい?」
問われた男ーーセーレは、ひたすらに黙っていた。
「物語は常にハッピーエンドであるべきなんだ。だって、創作だろう?現実離れな世界なんだ、どんな屁理屈も曲げて幸せにすることが出来る。理不尽なほど幸せなおとぎ話にせず、どうしてこんな誰も救われないおとぎ話が出来ていくのか。ーーなんで、おとぎ話の中でずっと泣き続けなきゃいけないのだろう?」
セーレからの返答はない。今となっては、“慣れた”と青年は水面の月を眺めた。沈んだネズミは上がってこない。次にまた“酷いこと”をしなければ、彼らは浮かんで来ないだろう。
水の中に片腕を伸ばす。前屈になったところで、もう片方の腕を掴まれた。止めろと、力強く。
「君は、いつもそうだ。何もしてくれないくせに、助けようとする」
腕を掴むセーレの引きに抗わず、青年は湖から離れた。
いつも、そうだった。
セーレがこの場所に来るのはもう何度目か。最近、より顕著となっていたのは。
「もう、駄目なんだ……」
何がとは聞かずとも、ここに足繁く通うセーレには分かっている。もう、青年が“限界”であるということも。
膝をつき、心をかきむしるように身を丸めて、嗚咽をもらす。それをセーレは見つめ続けた。
「セーレ、頼むからーー終わらせてくれ……!」
そんな願いは、聞き遂げられず、セーレはただただ。
「終わりたいなら、続けろ」
残酷に“生きろ”と言ってくるんだ。