物語はどこまでも!
「順番ですよー、順番に撫でますよー」
もうこのまま、羽毛布団めいたゲノゲさんたちにくるまれたまま天国にでも行けそうな気分だったけどーーガチャンッ、と唐突な音に驚いたゲノゲさんたちが散ってしまった。
何だと見れば、部屋の片隅でわなわなと焦ったようなゲノゲさんが一匹。
「ゴ、ゴメンナサイィ」
床にしおしおと落ちているゲノゲさんの周りにはお菓子の缶、小さな小物の山。棚に置いてあったお菓子の缶をひっくり返してしまったらしい。
ゲノゲさん肥満増加傾向ニュースを見てから与えるお菓子の量を減らしてしまったせいだろう。ついつい目に入ったお菓子の缶に近づいたら誤って落としてしまったところか。
「大丈夫ですよ。お菓子じゃなくてびっくりしたね。どこか怪我してませんか?」
クレヨンや、キーホルダー、どこかで拾った貝殻に、折りたたんだ紙に、写真。缶の表面に記載されている外装とまったく異なる中身たちの名称はさしずめ『たからもの』と言ったところか。
「懐かしい」
思わず呟き、微笑むほど、しばらく見ていなかった『たからもの』だ。いつ拾って、何の意図を持ってここに入れたのか分からないほど幼き日のことだけど、これら全てが大切なものだったことは間違いない。
だからこそずっと捨てられずに置いといていたものだ。こうしたこともなければ、わざわざ開けて見ることもない『たからもの』たちだけど、私はきっとこれからも捨てることはないだろう。
興味ありげなゲノゲさんと共にそれらを見て、またしまう。ーーと、折り畳まれた紙が気になった。
白い紙が黄色みがかるほど変色し、広げるにも破けそうなほど古い紙だった。これもまた、幼いころに『たからもの』として取っておいたものだ。紙に書かれた内容は変わらずにーー