物語はどこまでも!
「はい。多分、湖の近くかと」
あの森林の、と瞳が向かう先を私も見た。
街の裏手か、鬱蒼としげる緑の群生。絵本の世界ではよくある風景だが、何故だか物々しい雰囲気を受け取ってしまう。
親子にお礼を言い、歩く足だが、ふと違和感を覚えた。
「……」
彼が、いない。
いつもならばすぐに来るセーレさんの姿がどこにもないのだ。
彼が私の『訪問』を何を持って知るのかその原理は不明だが、ともかくも“来たら来る”といった法則は出来ている。
「まさか、もう……」
ここに来ていて、何かしらのトラブルに巻き込まれてしまっているのか。
別の物語界にいる可能性も否めないが、図書館において前代未聞の騒動が起きているこの状況。セーレさんが対処に回っていてもおかしくはない。
本人は認めてないが物語の住人たちに愛されている彼だ、きっとまた。
「っっ!」
気づけば歩く足が走っていた。
湖までの道中ーー絵本らしく目的地まで一本道を駆ける。
早鐘となる心臓は走っていたからか。違うと分かるのは息が止まりそうになっても足を止めなかったから。
「セーレさん……!」
焦燥と不安。早く行かなければ、“手遅れになっては遅いんだ”。
「くっ……はあっ」
湖が見えた。そうしてーー