小さな愛の形
缶を開け、一気に流し込んだ。

冷たいジュースは喉を適度に潤した。

ただ座っているだけなのに、額から汗が湧き出てくる。

隣の彼女も、暑いねと額の汗を拭いている。

夏だからねとそんな何気無い話し合いが何だか面白かった。

「暑いから中に入ろう。」
と僕は立ち上がる。

彼女は不思議そうに僕を見た。

「なんで?」

「暑いからって言ったじゃん。
それにここにいたら、君だって日焼けするよ。
女子は日焼けするの嫌なんでしょ。」

「それは大勢の女子でしょう。
私は少数の女子なのよ。」
と何故か胸を張って、堂々としている。

その自身のようなものが何処から来るのか、僕は知らない。

「分かったよ。」

そう言って僕はもう一度ベンチに腰掛けた。

「入らないの?」

「道が分からなくなって、僕が責められたらたまったもんじゃないからね。」

「優しいね。」

「何処が。」

「そういう所が。」

彼女は空を見上げる。さっきとそう変わらない空。

「意味が分からない。」

僕は呟いた。とても小さく。

隣に座っている彼女にも聞こえない声で。

彼女は相変わらず、空を見上げていた。

ずっと…ずっと……
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