小さな愛の形
『愛』とは何だろうか。

中学校で弁論大会が行われた際、ある女の子の弁論が目に止まった。

「お金と愛、どちらが大切でしょうか。」

女の子の一言に、誰もが息を呑む。

どちらが大切だろうか。そんなもの、僕が分かるわけがない。

女の子は言った。お金が大切だと。

言い切った。

その時の女の子の姿は、嘘偽りなんてない姿で、美しく見えた。

中学生の女の子がそんなことを言ったりしたならば、いい顔をする大人は多くない。

だが、だからと言って弁論に自分の思っていない事を書き、偉そうに発表されたのならば、聞く側としてはたまったもんではない。

彼女は最後に問いかけた…

『愛』とはなんなのかを。



僕は一度、『愛』と国語辞典で調べたことがある。

〈愛〉対象をかけがえのないものと認め、それに引き付けられる心の動き。

小さな僕にとって、それは訳の分からない言葉が並べられているだけだった。

僕は『愛』を知らないまま、高校生になった。
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