小さな愛の形
僕が食べ終わったものの、彼女はまだ食べ始めという頃だった。

「食べるの早いね!まだ色々ケーキあったから、見てみれば?」
と言われたが、僕はまだ食べるつもりは無い。

「いや、そんなに要らないよ。」

「小食だな〜。男の子なのに強くなれないよ〜。」
とからかわれた。

「食べただけで強くはなれないし、ケーキって食べた所で太るだけじゃない?」

「も〜そんな事言わない!」
と注意されてしまった。

頬をふくらませた彼女の顔は、どこか幼かった。

僕は本を開き、先ほど買った本を読み始めた。

「デート中に本なんて読んだら、周りから倦怠期と思われるでしょう!」
と注意されてしまったが、倦怠期もなにも付き合っていないのだ。

「別に周りの意見なんて気にしないし、そもそも僕達は付き合ってすらいない。

そんな事も見抜けていない人に、倦怠期なんて言われる筋合いなんてないと思うんだけど…」

その僕の言葉に、彼女は少し困ったが懐かしむような顔をした。

「昔にもそんな言葉を聞いたことがあったな。

ツッキーは私の幼馴染みに似てる。」

「いやそんな事言われて、僕はどんな反応をすればいいの?

僕はその幼馴染み知らないのに。」

その僕の言葉に、彼女は食べていた手を止めた。

「…そうだよね。知らないよね。」
と涙を流しそうな彼女に、僕も悲しくなった。

この感情がなんなのかは、今の僕には分からない。

いつか、この感情が分かる日が来るのだろうか。

それすらも分からなかった。

しかしこの感情は、彼女にだけ向けられないものだと言うことだけは、なぜか分かっていた。
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