小さな愛の形
田舎の高校で、頭がいいわけでも悪いわけでもない極々普通の学校。

そんな学校の中で中間ほどの成績を持つ僕。

桜の木が空に大きく手を伸ばし、花道を作っている。

今年の春は風が強く、桜の花達は早々に散ってしまった。

桜色の道を歩き、僕達の学校は見えてきた。

「お!ツッキー!おっはよー!」

「おはよう。今井くん。」

今井くんとは、クラスのムードメーカーで人気者。

明るい性格で誰とでも仲良くなれる。

毎朝必ず僕に挨拶をしてくれる。

僕達は一緒に教室に入った。

おっはよー!と先ほどと変わらない挨拶で教室に入る今井くん。

僕は今井くんの後で、挨拶もせずに、静かに入る。

ゾロゾロと人の波がやって来た。

僕は無理矢理な笑顔を作り、何とか席についた。

今井くんとは学校の前で毎日会う。

そして二人で教室に入る。

それが何だか当たり前のようになってきてしまった。

今井くんと教室に入ると、人が集まるので、少し息苦しい。

窓側の席の僕は、いつも窓の外を見るか、本を読んでいた。

そんな僕に話しかけてくれたのは、今井くんが初めてだった。

今とそう変わらない。あの日。

僕は、窓の外へと目を向ける。

大きな桜の木には、ほんの僅かに桜が残っていた。

僕はその桜を見て、小さく笑った。

春の暖かい風が、最後の桜の花びらが風になびいて、落ちる。

それは桜の花びら達が、踊っている様だった。
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