小さな愛の形
学校へ着いて僕は帰ろうとした。

しかし、彼女に止められた。

「かっ、帰り道…分かりません。」となんとも可愛らしい声で。

まぁ、一度しか来たのとのない道を一人で帰るのは無理があるか。
と思い、僕は学校のグラウンドで待っている事にした。

かなり話が長かった様で、帰る頃には少し暗くなっていた。

母親に夕飯の買い物を任された僕が帰らなければ、夕飯ができないのだが、彼女を一人で帰すわけにもいかない。

仕方なく、家に電話する事にした。

『はい、◯◯です。』

いつもと違う母親の声に、違和感を覚える

そして母親の声に身構えてしまう自分を情けないと思った。

「あっ母さん。僕だけど…」

そこまで言うと、電話の向こうの雰囲気が変わる。

電話越しでも分かるんだなぁ。
と馬鹿な事を思っていた、次の瞬間…

『あんた、今どこに居る?今すぐ帰ってこんか!夕飯できんやろ!!遅ーなるならなるってさっさっと連絡入れんかい!』
とまぁ強烈なお説教ですわ。

方便なんだか方便じゃないんだか分からない言葉を使う時の母はかなり切れている。

仕方ないので、丁寧に今まであった事を説明した。

『はぁ?道案内?今どき地図が読めん子居るわけないやろ!』
と信じてもらえず。

そして、嘘をついたと更に逆鱗に触れた。

その後はずっと謝り続け、母の愚痴を47分も聞くはめになった。

電話料金、いくらかかるんだろうなー。

恐ろしくて、見えないかもしれない。

しかし、彼女の方がいくら何でも遅すぎる。

そう思い、後ろを振り返ると口に手を当て、必死に笑いを堪えている彼女がいた。

「いっ、何時から居たの!?」

「えっと、40分ぐらい前からだよ。」と必死に笑いを堪えながら、彼女は言った。

40分前って、電話の話の内容ほぼ聞いてんじゃん!

「なっ何で声かけてくれなかったの!」

「面白いから。」と彼女は即答した。

更にドヤ顔で。

そこ、ドヤるとこ?という僕の疑問は疑問で終わらせた。

彼女に聞くのは少し怖かったというのもある。

しかし、もう周りは暗くなっていた。

「帰ろう。」と言い、僕達は歩き出した。
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