小さな愛の形
そんな夏の(家では)大問題が無事に終わり、その後は暇な夏休みを過ごし、二学期となった。

別に二学期になったからといって、一学期と変わる人なんてそうそういない。

一つ、変わった事を挙げるとするならば、みんなの肌の色が黒くなった事ぐらいだ。

部活に打ち込む人が多く、日焼け止めを塗ったとしても、黒くなってしまう。

そんな中部活にも入っておらず、部屋からほとんど出ていない僕は、クラスの中で一人だけ白かった。

おかげで悪目立ちだ。

クラスの女子はそんな僕を羨ましがるが、男子から嫌というほどからかわれる。

体力的に、もう疲れた。はぁとため息が思わず出てしまった。

席に着くと、話し掛けてくる人はいなくなった。

それが少しだけ心地よかった。

その日は何故か窓とは逆の方を見た。

いつもは見ない風景に、少しだけ戸惑った。

こんなクラスだったか?と今更ながら思った。

そして、僕の席の隣に見慣れない席が一つ。

女子達が、朝から集まって話していたのはこの事かもしれない。

「ねーねー、ツッキー!ここの席って女子なんでしょ?」と僕に訳の分からない質問をしてくる。

この席に座る人が女子か知る訳がない。

「そうなの?僕、知らない。」と適当に返しておく。

女子達は何故か、頬を少し赤くし走って行った。

意味が分からない。今の話の中で僕から逃げる必要が、何処にあったのだろうか。

頬杖をついて今度こそ、窓の外を見る。

早めに散ってしまった桜はどの年よりも早く葉桜となった。

葉桜だった木々も、今では色鮮やかな葉を付けている。

生暖かい風が、なんとも気持ちが悪い。

一面桜色に染まった世界は遠い昔のように感じた。
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