君と、ゆびきり
風の目は微かに揺れていて、あたしに差し出す手は小さく震えていた。


あぁ……。


あたしはこの光景を覚えている。


知らない間に150回も繰り返した光景だ。


あたしは自分の右手を風へと伸ばした。


そして小指を絡める。


「中学も高校も、一緒に卒業しよう」


「……うん」


150回聞いたセリフが、また風の口から発せられた。


「約束だよ?」


「もちろんだよ」


あたしはこの約束を忘れてしまった。


風とあたしだけの学校のことも、チアキのことも、全部全部忘れてしまった。


だからこうして、高校を卒業すると同時に時間が戻され、繰り返して来たのだ。


あたしは絡めた小指をジッと見つめる。


今度こそ、絶対に忘れない。


風との約束を、忘れない……。
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