君と、ゆびきり
「まぁ、考えなくはないけど……」


自分で話題を振っておいて、なんだか恥ずかしくなってきた。


でも、付き合ってもいないのにキスをするなんて嫌だった。


風の顔を直視することができなくて、あたしは俯いた。


視界の中一杯に難しい医学の文字が見える。


けれど、その文字を読むことはできなかった。


心臓がドキドキとうるさくて、文章として頭に入ってこない。


その時だった。


風の手があたしの手に触れた。


相変わらず細い指先だ。


今ではあたしの方が太くなってしまったかもしれない。


「千里、顔上げて」


そう言われて、あたしはゆっくりと顔をあげて風を見た。


そこにはいつものように柔らかくほほ笑む風がいた。


風はいつもより少しだけ頬を赤くしてあたしを見ている。


普段なら、熱でも出たんじゃないかと心配しているところだ。


「千里、俺と付き合って?」


小首を傾げてそう言う風に、あたしは一瞬心臓が止まるかと思った。


これが151回目のあたしの、産れて初めての告白になった。


相手は風。


青じゃない。
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