君と、ゆびきり
「いや、ないけど」


風は数秒あたしを見つめた後、そう返事をした。


「夏休み中に、みんなで海へ行こうと思うんだけど」


「へぇ! 素敵だね!」


風はそう言い、目を輝かせた。


「うん、そうなんだけど……。風も一緒にって、言ってるんだ」


「俺も一緒に?」


風は瞬きを繰り返してあたしを見た。


その表情はとまどっているようにも見える。


「うん。電車で1時間くらい」


「でも俺、泳げないよ?」


風は自分の指さしてそう言った。


「そんなのはわかってるよ」


「泳げないのに海って行っていいの?」


風は今度はキョトンとした表情になった。


本当にわかっていなさそうで、思わず笑ってしまう。
< 156 / 226 >

この作品をシェア

pagetop