君と、ゆびきり
「千里は、本当に可愛いんだな」


「なによ。褒めてもなにもあげないんだから」


あたしは風から視線をそらしてそう言った。


今日だけで水着姿も浴衣姿も見せてしまい、少しだけ恥ずかしさを感じた。


「俺、千里からは沢山のものを貰ってると思うけど」


「そう?」


思い出してみても、風にあげたものなんて大してない。


唯一頑張ったものと言えばビーズの指輪くらいだった。


「千里がいなかったら、俺はこうして海を知る事はなかった」


「それなら、玲子にもお礼を言わなきゃ」


そう言って振り向いてみると、さっきまでそこに座っていたはずの玲子がいなかった。


あれ?


そう思って周囲を見回したタイミングで、携帯電話がメールの着信を知らせた。


確認してみると玲子からで《あたしたち屋台がある方を歩いてくるね! 千里と風の分もちゃんと買ってくるから!》と、書かれていた。


いつの間にか他の子たちもいなくなってしまっていたようだ。


もしかしたら、気を使ってくれたのかもしれない。
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