君と、ゆびきり
そんな中だからこそ、風の事を絶対に忘れたくないと思ったのだ。


病院へ来るたびに、風はベッドの上に教科書を広げて勉強をしていた。


あたしの部屋で2人で勉強をした日から、あたしと風の目的は同じものになっていた。


将来、医者として働く事。


あたしよりも勉強のできる風は、いつも授業よりも少し先を勉強していた。


「風ならいいお医者さんになれるね」


高校1年生の夏休み、あたしは風の病室に通いながら課題をしていた。


「そうかな? 俺は千里の方がいい医者になれると思うけど」


風は課題を難なく解いていきながらそう返事をした。


一方、あたしの手はさっきからずっと止まりっぱなしだった。


何度読み直してみても、質問の意味がわからない。


中学時代は医学書と辞書を片手に一生懸命勉強していただけだからよかったけれど、高校になると話は別だ。
< 179 / 226 >

この作品をシェア

pagetop