君と、ゆびきり
この病院には長い事着ているけれど、屋上にきたのは初めてだった。


エレベーターが開いた瞬間、あたしは「わっ」と声を上げていた。


そこは広いエントランスになっていて、椅子が沢山並べられている。


壁はガラス張りになっていて屋上庭園を見渡せた。


「すごい、こんなふうになってたんだ」


あたしはそう言いながら風の車いすを押して、庭園へと出た。


風がここちよくふいている。


「知らなかった?」


「全然知らなかった」


小さな池には鯉が泳いでいて、白い石が敷き詰められている日本庭園だ。


その周囲に遊歩道が作られていて、のんびりと散歩している入院患者さんの姿があった。


「綺麗だろ? 花火はここから見れるんだ」


風の言葉にあたしは大きく頷いた。


「すごく素敵」


日本庭園に咲く花火を想像してあたしは空を見上げた。
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