君と、ゆびきり
そういえば、151回目になってから空を見上げる事も少なくなってきたような気がする。


150回目までは毎日のように空を見上げていたのに。


もしかしたらあたしは、何かを、風を思い出すために空を見上げていたのかもしれない。


「気分転換はできた?」


庭園の外周を一周したところで風がそう聞いて来た。


「もちろん。ありがとう、風」


あたしはそう言い、後ろから風の頬にキスをした。


車いすを押す時、風の体が以前よりもずいぶん軽くなっていることに気が付いていたけれど、あたしは黙ってエスカレーターのボタンを押したのだった。
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