君と、ゆびきり
適当な嘘だったけれど、学校の事情を知らない風のお母さんは家に上げてくれた。


嘘をついてしまった罪悪感が、胸を痛めた。


それでも、風に会えることの方がずっとずっと嬉しかった。


階段をあがって一番奥の部屋へ向かう。


そしてノックを3回した。


するとすぐに風が姿を見せた。


「千里!?」


風はあたしを見た瞬間目を丸くしてそう言った。


「えへへ。来ちゃった」


ペロッと舌を出してそう言うあたしに、風は笑顔を消した。


「千里、学校は?」


鋭い質問だ。


あたしは何でも見抜いてしまいそうな風の目から視線をはずし、「午前中で終わったの」と、嘘をついた。


だけど、他の人を騙せたとしても風を騙す事はできないと、あたしにはわかっていた。


そのくらい、風は真っ直ぐなのだ。
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