君と、ゆびきり
否定しても、どうしても言葉が続かなかった。


一番最初の人生の時、あたしは何を目指していたのか。


思い出そうとしてもなにも思い出す事ができなかったのだ。


150回目でもそうだ。


あたしは自分の夢なんて持っていなかったように思う。


「たぶん、風の事を助けたいっていうのがあたしの夢なんだと思う」


「俺の事を……?」


風は眉を寄せてそう言った。


いつも笑顔の風からは想像もできないような、苦しそうな表情だ。


いけない、勘違いさせてしまう。


だけど、なにをどう説明すればいいのかわからない。


「千里は? 千里自身はなにがしたい?」


「待って風、勘違いしないで」


あたしは風の質問を遮ってそう言った。


自分を落ちるかせるため深呼吸を繰り返す。


見ると、風は今度は泣き出してしまいそうな顔をしている。


違う。


あたしは風にこんな顔をしてほしいんじゃない。


伝えなきゃ。


誤解を解かなきゃ。
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