君と、ゆびきり
「また悩んでるみたいだねぇ」


チアキは大人っぽい口調でそう言った。


あたしはそれすら懐かしくて笑みをこぼす。


「まぁ……ね」


頷き、カバンを机の上におろした。


まだまだ慣れない実習で、体中が痛い。


「どうして風に会いに行かないの?」


突然確信に触れて来るチアキにあたしはたじろいた。


これがあたし自身が作った幻想だなんて信じられない。


151回も繰り返している内にチアキもその実態を強めているのかもしれない。


「そんなの、チアキだってよくわかってるでしょ」


「そうだね。あんなことを言われてショックだった」


「……うん」


思い出してもまだ胸がうずいた。


風は自分の事を忘れてくれと言いたかったのだ。


その言葉は、あたしが遮ってしまったけれど。
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