君と、ゆびきり
両手で卒業証書を受け取っても、その手が震えてなさけなかった。


「千里……卒業おめでとう」


風の手があたしの頬を撫でる。


「あ……りがとう! ありがとう、風!」


あたしは風に抱き着いた。


すごく細くて頼りない風の体だったけれど、風の心臓は確かにまだ動いていた。


風は生きている。


この瞬間にも、生きている。


だけど、風の名前を呼んでも返事が聞こえなくなったのは、それから数時間後のことだった。
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